ちび象ランディと星になった少年        坂本小百合

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星になった少年」という名前で映画化が決定!
哲夢くんを演ずるのは、映画「誰も知らない」でカンヌ国際映画祭史上最年少の男優賞を受賞した俳優、柳楽優弥(やぎらゆうや)くんです。

 

日本の動物園にはゾウの飼育担当と言う人は居ても「ゾウ使い」という職分があることを私は知らなかった。タイやインドを旅行する中で、巨大なゾウを意のままに操ることの出来る「ゾウ使い」を見てはスゲー、と言う感想は持ってもそのような職業が日本で存在しうると言うことに思いを寄せたこともなかった。湘南プロダクションという民間の動物プロダクションではゾウを沢山飼育していて、そこにはタイのゾウ使いを雇って飼育に当たらせている、と言う話は以前聞いたことがあったが、阪神パーク閉園のさいに飼育されていたキク子とアキ子の二頭のゾウが引き取られて行った先が市原ぞうの国という私設動物園であっても、それが湘南プロダクションが発展したモノだと言うことも知らなかった。

日本の多くの動物園では沢山のゾウが飼育されているが、その多くは貧弱な施設にいて、満足な飼育条件のもと飼育されているわけではない事実、一方で飼育を担当する人達は常に危険と隣合わせの条件の中での労働を強いられている現状は如何ともしがたく、せめて公共の動物園であってもタイのゾウ使いを雇い入れるような道を模索できればいいのに、という安直な考えを持っていた私はこの本にものすごい衝撃を受けた。

この本の主人公である哲夢くんは母親の再婚先が動物プロダクションの経営者、という家庭環境からゾウと小さい頃から接していた。中学生になってテレビの取材で初めてタイのゾウ使いの学校に行く。そこで接したゾウ使いの世界に惹かれる哲夢くん。中学校の卒業とともに、彼は高校進学を止め、ゾウ使いの学校に行くことを決意する。家族の反対、タイでの生活、帰ってきてからの哲夢くんの成長ぶり、やっと社会的な認知を得、ゾウ使いとしての道を歩き始めたところでの不慮の事故。こんな現実があって良いのか?神はこの世に存在しないのか?日本の動物園界は得がたい人材を未来にわたって無くしてしまった。

タイでは仔ゾウが4、5歳になると母親と離して訓練を開始するんだけど、このとき、人間がむりやり親子を引き離すんだ。お母さんゾウを大きな木に鎖でつないで、仔ゾウだけ別の場所に移動させるんだけどそのとき、母ゾウがものすごく暴れて、悲しげな声を出すんだ。仔ゾウも悲しそうに・・・・俺は見ていられなかったよ。日本にいるゾウのほとんどはそういう経験をしてきているんだ。ゾウは母親の愛情もほとんど知らずに、家族の暖かさや恋も知らないで俺達人間につくしているのに、コンクリートのゾウ舎で寂しく一生を終えるんだ。俺はね、そんな日本にいるゾウたちを幸せにしたいんだ。

哲夢くんの遺志はこの本の作者である坂本小百合さんに受け継がれ、勝浦ぞうの楽園(老ゾウ園=ゾウの老人ホーム)がこの春オープンした。これは現実に起こった出来事。今のような時代にこんな話に接するとは思ってもみなかった。
(犬楠 2004/06/24)



書籍データ

ちび象ランディと星になった少年
作者:坂本小百合
単行本: 142 p
サイズ(cm): 182 x 128
出版社: 文春ネスコ(2004/02)


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